エルメスのベアンです。定番で憧れの長財布です。まずは、各部を診断していきます。
左上に3センチほどの亀裂が見えます。
鋭利な刃物で切られたような切りキズです。外周など擦れて色落ちした部分も多数あります。
出来る限り再生補修したいと考えています。
折り曲げ部分や角部などホツレは数か所あるようです。
全体に汚れはありますが色落ちまではしていないように見えます。しかし・・・・
全体の汚れを落としてみますと、擦れて色落ちした部分に汚れが付着していたことが判ります。
汚れが付着して使用していた状態です。
汚れを落としてみると革の表面が色まで剥がれているほど擦れています。
糸が擦り切れて無くなるほどですから革も擦り切れています。
折り曲げ部同様に角も傷みやすい部分です。
小銭入れの使用は控えられていたらしく、ダメージは少ないように見えましたが・・・
ファスナーの裏側にはファスナーの金具で擦れたキズがありました。
折り曲げ部分のホツレは使用していれば当然です。
ミシン目が切り取り線のように革が裂けています。
糸を全部ほどいて、パーツごとに補強再生加工します。(作業中はもっとバラバラにします)
0,3~0,6ミリの厚みの革を剥がして各部に補強加工します。
組み立て直して完成すれば、補強加工した跡ははどこからも見えません。
見た目は変わらず強度だけがアップします。
H金具の取り付け部を裏面というか内側から見たところです。
バラバラにして内張り革も剥がさないと見れない部分です。
当然、この部分も補強加工してから金具を取り付け直します。
小銭入れのマチ革は問題ないように思いましたが・・・・
解体して裏面から見てみるとマチ革もミシン目で裂けていました。
この薄いマチも表側と裏側の革に分けて補強加工します。
エルメス特有なんですが、ベロ革の芯材が中から出てきて外周が毛羽立ちます。
最高級の財布がこのような状態では残念です。
ベロ革に挟み込まれている芯材を交換します。
この財布で唯一芯材が使用されているのがベロ革です。(傷みやすい部分で強度が必要だからです)
汚れ取り・キズ補修・補色染め直し・補強加工・全体縫い直しなど全ての作業を行いました。
修理する前の画像と比べなくても、汚れも無くホツレも無く綺麗でしょ!
ベロ革も汚れや色落ちも無くなり、全体芯交換で毛羽立ちも無くなりました。
内側も擦れキズや汚れもなくなり綺麗です。
ファスナー小銭入れの中も新品みたいです。
カード入れなど全てのポケットの中まで汚れや傷がないように仕上げました。(やりすぎです。)
綺麗になると忘れてしまいますが、左上にあった切りキズもほとんどわからなくなりました。
小さい頃から良いものを丁寧に長く使用することの大切さを
お母様から教わって育てられたとお聞きして感動しました。
この財布もお母様から譲り受けられた品で大切にしたいとご依頼いただきました。
出来る限りの作業を施してあります。
大切にしてあげてください。
by レザークリエーション http://www.brand-repair.com 「大切なブランドバッグ」で検索