ルイヴィトン・ソミュール(Saumur M42256)です。
1987年2月に製造されてバッグですから年代ものですが最高品質時代の良品です。
25年以上経過していますがモノグラム地は柔軟性があり綺麗な状態です。
ソミュールはショルダーの付け根くらいしか損傷の出ない優秀なバッグですが、
このバッグも両側のショルダー付け根を修理した形跡が見られます。
負担が掛かる部分は強度をアップさせて組み立て直すのが当社の修理ですが、
傷んだ部分を切り取って繋ぎ合わせるだけの加工がされていたようです。
何年も使用してきたショルダーは弱っていますので繋ぎ合わせても切れてしまいますし、
仮に5cmづつ切り取ってもショルダーの長さは10cmも短くなってしまいます。
こちら側も、既に切れてきていますねぇ~
何より刻印入りのカシメ金具が代用の金具に変更されているのが残念すぎます。
今回は全体をバラバラに解体して各部の強化加工を施しながら、
ヌメ革パーツを新品作成します。
まずは、取り外したバックル金具を洗浄してみましたが洗浄だけでは綺麗になりません。
ここまでバラバラになるとソミュールと判別できないですね~
これからが本番スタートです。
沢山あるヌメ革パーツを一つ一つ作成して組み立て直します。
疲れ果てたパーツは新品のヌメ革と比較すると年代を感じます。
よく頑張ってくれました。
ヴィトンのヌメ革パーツには外周に焼きコテでラインを入れてあるのですが、
失敗すると作り直す必要があり、リスクの高い加工なので省略する修理店も多いです。
しかし、焼きコテのラインがあるとないとでは大違いです。
最高品質のヌメ革に焼きコテでラインを入れるだけで、
古き良き時代のヴィトンパーツに変化します。
元々は一枚の革を折り曲げただけのパーツですが、
当社は裏側にもヌメ革を貼り合わせて強化芯材をサンドしています。
材料も倍以上必要ですし立体的に作成する必要がありますので作業性は最悪です。
量産品ではできない贅沢な加工で少しやりすぎ感もありますが確実に頑丈です。
バックル金具を磨き込んでいます。
一気に全部、綺麗にしたいのですが握力がもちません。
各パーツを本体に縫い付けて組み立てます。
パーツのデザインやサイズだけでなく、ステッチまでコピーして作成していますので、
元の穴とズレることなくパーツを縫製することができます。
すごく重要な部分ですが、こんなことしてる修理店は少ないはずです。
ここまでされている修理店がございましたらご一報ください。
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半面が仕上がりソミュールとわかる形になってきました。あと一息です。
25年ぶりに元気な姿に生まれ変わりました!
負担が掛かるパーツは強化芯材を入れ込んで作成していますので、
見た目だけでなく強度は新品時以上に進化しています。
大切に愛用されているとリニューアルリペアで復活できる良い例です。
当時の素材や作り込みが一流でも、このバッグのように良い状態を維持できていなければ、
安心して長く愛用できる状態にはなりません。
残念ながら当社ではリニューアルリペアを積極的に承れません。
ビジネスとして成立しないことも要因ですが、
リニューアルリペアしたくなるような品も少ないのが現実なんです。
当時のヌメ革素材に負けない革を使用していますので、
少しづつ色の変化を楽しみながら育ててあげてください。
by レザークリエーション http://www.brand-repair.com 「大切なブランドバッグ」で検索
(お手紙紹介です)
ブログ拝見させていただきました。大変な手間と作業だったことがよくわかりました。
返す返す最初に修理を出したことが悔やまれます。
本当にありがとうございました。
現在我が家に来ている母と一緒にブログを見たのですが、「あのバックが…」と驚いて
いました。これからも私の娘が大切に使ってくれることを喜んでくれています。
母がシャネルのバックで内側がベタベタになったものがあるらしいのですが、修理は可能
でしょうか?張替は大きさにもよると思いますが、参考程度に費用を教えていただけますか?
バックはキルティングの定番のもので、内側は赤です。購入は20年以上前のものです。
最期になりましたが、本当にお手数をおかけしました。
(その後)
本日宅急便が届きました。
素晴らしい出来上がりに感激しました。
母のバックは改めて送らせていただきます。
その際はまたご連絡させていただきますので、
宜しくお願い致します。
千葉県 H 様
お母様から譲り受けられて大切に使用してきたバッグを
リニューアルリペア加工を施し、次はお嬢様に譲られ3世代で愛用される素敵なご依頼でした。
当時のヴィトンは頑丈な素材と丁寧な作り込みで作成されています。
なにより、丁寧に使用されてきたことが3世代で活用できる大きな要因です。
4世代目を目指して大切にご使用ください。
ありがとうございました。