他店様にて塗装など加工歴のあるエルメスのケリーバッグです。
その後、当社で持ち手の付け根を強化加工したことのある品です。
前回のご依頼時にも各部のホツレや亀裂が気になっていました。
今回はリニューアルリペア加工のご依頼です。
カブセに亀裂が見られます。
内側から見ても同様に。。。。
大きく裂けてしまう前に解体して強化加工が必要です。
負担が掛かるマチの縫い合わせ部も亀裂があります。
カブセの開閉で負担が掛かるカブセ付け根にも亀裂があります。
反対側のカブセ付け根も同様に。。。。
底面は縫製糸が擦り切れてホツレが見られます。
塗料剥がれも見られますが安心して使用するためには縫製の方が重要です。
底面はホツレ部が大きく、接着だけで耐えているような状態です。
外面は他店様の塗料の樹脂が縫製糸に染み込んで硬化していますので、
糸を取り除くことができるかどうか不安があります。
解体することで厚塗りされた塗料が剥がれてくる可能性もあり難易度が高いです。
当然ながら直営店では断られてしまう状態です。
塗料で固められた縫製糸を一目一目取り除いて解体。
解体に通常の10倍以上の時間がかかりました。
内張りには多数の傷や汚れが見られます。
マチの天部は復元強化加工が必要です。
亀裂が見られるマチの天部は内張りを剥がして全体に強化芯材を入れます。
ミシン目が切り取り線のようになり革が切れた部分も数か所に見られます。
他店様の塗料で隠れていましたので解体しなければわからない損傷です。
解体することで想定外の損傷が出てきて手間が増えていきますが、
ミシン目が切れたままでは縫製することができませんので、
内張りを剥がして強化加工を施します。
本体の内張りを剥がすと年季の入った芯材が露出。
ここまで解体しなければ底面のホツレを縫い直すことができません。
底板のボール紙の芯材はひび割れや亀裂があり限界を超えています。
底面のホツレだけでなく芯材の状態からもリニューアルリペア加工の選択は正解。
底板に新しい芯材を入れ底角4か所も強化。
カブセも解体して亀裂部やカブセ付け根を強化します。
反対側も同様に。。。。
組み立て直す前に内張りの傷や汚れも改善させました。
金具は他店様の塗料で錆びついたような雰囲気です。
塗装した後、少しは拭き取ったようですが・・・・
比較のため片側のベルト先端金具は未加工のまま撮影。
研磨加工することで他店の塗料汚れが消えて真鍮色が復活です。
底面の縫製も完了。
爬虫類革の特殊素材ですので他店様の塗料を剥がし取るには、
リスクが高すぎますので今回は外面の補修補色加工は辞退しました。
でも、塗装剥がれが目立っていた部分は少しだけ補色しました。
擦り切れ欠損も見られた底角4角も強化されて安心です。
塗料でコテコテになっていた縫製糸も改善してホツレや亀裂もなくなり、
コバ面も仕上げ直したことで美観も整いました。
しかし、塗装など美観を整える加工よりも、
安心して長く使用するためには各部に施した強化加工が有効です。
丁寧に取り扱いながら大切に長くご愛用ください。
by レザークリエーション http://www.brand-repair.com 「大切なブランドバッグ」で検索
(お手紙紹介です)
お世話さまです。
昨日、受け取りました。また、ブログも拝見しました。
かなり大変な作業になったようですが、今回思いきって、
リニューアルリペアをお願いして良かったです。
ガタがかなりきていたしたね(笑)
大切に使われてきたと思われるケリー、これからも大切に使いたいと思います。
ありがとうございました。
東京都 O 様
お受け取りのご連絡ありがとうございます。
塗装加工が少し残念ですが、
各部の強化加工や縫い直しで構造的には耐久性が増しています。
古い品だけに最高品質の素材を使用しながら、
腕の良い職人が丁寧に作成したバッグですので、
大切に長くご愛用ください。