KENZOの二つ折り財布です。
全てのパーツに損傷があり財布として機能していたのが不思議な状態です。
17年前に祖母様からプレゼントされた品で、
「この財布以外は使いたくない」ということでご依頼いただきました。
外面は擦り切れ欠損や革の劣化が見られます。
擦り切れて無くなった折り曲げ部は内部材が飛び出しています。
反対側の折り曲げ部も擦り切れて大きく欠損しています。
外周は内側に革を(ヘリ返す)構造だったと推測しますが、
擦り切れて縫製できない状態。
ステッチより外側は擦り切れて無くなっています。
限界を超えた外面革ですが交換してしまうとKENZOの刻印が無くなるだけでなく、
買い替えることができないプレゼントされた大切な財布とは別物になってしまいます。
この辺りは当て布をして素人修理した痕跡があります。
どのような状態なのか取り外してみなければわかりません。
内部材も重傷です。。。。・・・・と、いうか手遅れです。
外面に出ていた当て布は小銭入れの底を補修するための加工のようです。
小銭入れのカブセ外周も、ヘリ返した革が擦り切れて白い芯材が露出しています。
カブセを開くと・・・・
カブセの内側にも当て布が・・・・
この部分も解体するのが怖いです。
同様に。。。。
小銭入れの中も修理?
こちらは当て布加工とは別のタイミングで加工された部分だと思います。
マチも合成皮革で作成しています。
素人加工して損傷を与えた部分も多数あり正常な部分がない財布ですので、
修理は不可能と判断される修理店が多いと思います。
バラバラに解体しました全てのパーツが重症です。
外面革は擦り切れ欠損や変形で財布の外面としては使用不可能な状態です。
全てのパーツを作り替えれば作業は楽ですが、
愛用してきた手放せない財布とは別の品になってしまいます。
長年の愛着が染み込んだ買い替えできない財布ですので、
塗装など美観を整える加工は出来る限り避けながら、
現状のまま復活させます。
外面やカードポケットにあるロゴマークも残さなければ・・・・
この状態の革を再利用しようと考える修理店なんか常識ではありませんが・・・・
小銭入れ部の当て布を取り除くとビックリ状態。
外面革と刻印のあるポケットと小銭入れのパーツは重要パーツですので、
ボロボロ状態の小銭入れも出来る限り再利用してみます。
内張りの合成皮革もボロボロ。
この辺りは合成皮革から本革に変更して贅沢仕様にします。
元の素材を出来る限り活用しながらリニューアルリペア加工の完了です。
塗装加工などもせずにクリーム磨きだけに留めて、
買い替えできない財布の構造面を丈夫に修復しました。
外周のヘリ返し革も復活。
折り曲げ部や外周のヘリ返し革が復活して縫製可能になりました。
折り曲げ部も同様に。。。。。
合成皮革部は本革仕様で作成。
新品時より丈夫で贅沢仕様です。
小銭入れも元の素材を磨きながら当て布部を本革で部分作成することで、
素人修理したことも思い出せるように。。。。
小銭入れも内張りは本革仕様です。
カードポケットのロゴマークも残しています。
出来る限り元の素材を活用しながら塗装加工なども避けて、
別の財布にならないようにリニューアルリペア加工しています。
しかし、内張りが本革仕様になったことや各パーツを強化したことで、
変形型崩れも補正され構造的には新品時より丈夫に復活しています。
技術的な問題もあり他店様では断られてしまう状態でしたが、
祖母様からプレゼントされた大切な財布を補修しながら使用してきたと、
お聞かせいただきましたので悪戦苦闘しながら復活させました。
今後は労わりながら大切にご愛用ください。
by レザークリエーション http://www.brand-repair.com 「大切なブランドバッグ」で検索