塗装など各部に加工歴があるエルメスのバーキンです。
塗装されていますので当社では本来の状態はわかりませんが、
表皮のひび割れからも劣化が激しいバッグのようです。
塗装されていますが持ち手にも無数のひび割れが発生しています。
この辺りには亀裂あるように見えます。
底角には何かを盛り付けたあと塗料を塗っているようです。
こちらの底角も部位の判断が出来ないほど何かを盛り付けています。
当社的には修理したバッグではなく損傷を与えられたバッグです。
底角4箇所は、どのような加工をされているのかわからないので、
修理が可能かどうかも判断が付きません。
修理によって改善したのか悪化させたのかも判断できない状態です。
マチの天部も傷みやすい部分ですが補強や強化はせずに、
塗料を塗っています。
マチの縫い合わせ部も切れています。
塗装で見た目を誤魔化すよりも構造面を改善させるのが先決です。
底角に塗られた塗料の色も別物のようです。
内ポケットの両側天部にはホツレが見られます。
クロシェットの革紐は切れた中央部分を繋ぎ合わせています。
他店様の塗料を左半分だけ取除いてみましたが別色でした。
塗料は革の繊維に染み込んでいますので完全に取除くのは困難ですが、
塗装されたバッグでも塗料や汚れを取除かずに上塗りする業者も多いので、
注意が必要です。
亀裂が見えていた部分の周辺は歯形が多数見られます。
おそらく犬に噛まれたことがあると思われます。
塗料を取除いた底角には白いパテのような物が盛り付けてありました。
白いパテを取除くと大きな穴が空いています。
穴が空いた部分をパテで塞いで塗料を塗ることでは何も改善しません。
全ての底角部にはパテが盛り付けられています。
取除くのが面倒ですし怖いです。
底角には強化加工が必要ですので本体を裏返しましたが・・・
予定外ですが底角付近の内張りも劣化などで大きく裂けてボロボロです。
少し塗料を塗った形跡も見られますが手に負えなかったようで、
放置したと思います。
こちらも同様に。。。
こちらの底角は適当に切った革を大胆に縫い付けてありました。
画像だけを見て購入されたとのことですが、
(使い込まれて傷んだバッグ)と(人的損傷を与えられたバッグ)なら、
迷わず余計な損傷を与えられていないバッグを選ぶのが賢明です。
底角部をバラバラに解体。
4箇所とも各パーツに解体して強化加工を施して組み立て直します。
負担が掛かる内側天部も素材劣化で革が裂けています。
亀裂が見られたマチの天部だけでなく前後面も解体して強化します。
反対側のマチも同様に。。。
後面の縫い合わせ部にも亀裂がありました。
ポケットの両側天部も縫い直すのですが・・・
ポケットも裂けていましたので強化加工が必要です。
ポケット天部のステッチも擦り切れて糸が無くなっています。
傷みにくい内部材ですら糸が擦れて無くなるほど活用されたバッグです。
内ポケットを縫い直すためには本体を大きく解体する必要があります。
ポケットの両側を強化したあと縫い直しました。
天部の擦り切れホツレも改善させています。
ホツレだけでなく裂けていた縫い合わせ部は強化していますので丈夫です。
大きく裂けていた底角も組み立て完了。
各部材に強化芯材を入れ込んで縫製しています。
こちらの底角も同様に。。。
塗装されていなかったカブセ裏に色を合わせて補修補色加工も完了です。
カブセ天部や前後の縫い付け部も強化芯材を入れ込んで縫製しています。
犬に噛まれていた部分も出来る限り改善させました。
後面も同様に。。。
底角のパテを取除いて大きな擦り切れ穴を強化しながら塞いで、
組み立て直しています。
擦り切れて大きな穴が空いていた底角もパテで穴を塞いだだけの
誤魔化し加工ではなく強化していますので安心です。
作成交換した細い革紐。
細い革紐ですが両端を持って引っ張ると丈夫さの違いがわかります。
限界を超えるまで活用されたバーキンに誤魔化し加工を施したバッグですので、
各部に心配な部分は残りますが御依頼いただいた部分は丈夫に改善しています。
出来る限り良い状態を保ちながら大切にご愛用ください。
by レザークリエーション http://www.brand-repair.com 「大切なブランドバッグ」で検索
(お手紙紹介です)
レザークリエーション様
無事受け取りました。予想以上の納期の速さに驚き、
また、仕上がりの美しさに感動しました。
思わずニヤリとなる〇〇〇も有難うございます。
ブログ拝見しました。
四隅が怪しいと思ってはいましたが、
まさかのパテ塗でごまかしていたとは!
特に損傷の大きな箇所は別皮革を縫いつけたとはいえ、やることが雑すぎ。
ほかにも、縫いつけ内張りの劣化など予定外のダメージにもご対応くださり、
ただ感謝しかありません。
隅々まで、本当にお手間をお掛けしました。
中古品購入の際は「余計な損傷を加えられていないもの」を鉄則にします。
しまい込むのではなく、大いに楽しんで使うけれども管理に気をつけ、
長くお付き合いしたいと思います。
有難うございました。
追伸:
どうでもいい個人的事情ですが、こちらのバーキン、
ある漫画のキャラを借りてヂェーンと名付けました。
とある事情で、8等身美人(元モデル)がずんぐり2.5等身になってしまうのですが、
そのくらい劇的ビフォーアフターです。
あんなにひどい状態だったのが、
元の美人に戻った感激・感動で胸がいっぱいになりました。
長野県 I 様
お受け取りのご連絡ありがとうございます。
エルメスのバーキンはジェーン・バーキンのために作成したのが始まりですので、
ジェーンと名付ける方もいると思いますが漫画でもあるこは知りませんでした。
出来る限りよい状態を保ちながら大切に長くご愛用ください。